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Kei Mizumori
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記事&エッセイ

日本語力低下が招く怪NESARA情報の流布?
2007年6月21日
日本語力の低下
振り返ってみれば、言葉遣いの乱れをはじめとする日本語力の低下は、本来、見本となるべきマスコミの質の低下が牽引し(免許更新制度がない)、今から20年ほど前より若年層で顕著に現れ出したように思われる。いつの時代でも若年層による言葉遣いの乱れは年配層の懸念材料ではあったものの、ワープロからパソコンに移行して、特にインターネットが普及しはじめた90年代後半からは、その質が大きく変化を見せ始めた。日本語力の低下は若年層に限られた傾向ではなくなったのだ。ビジネスの現場でも、文章を手書きする必要性が激減したこともあり、漢字能力だけでなく、読解力、作文力、ひいては根本的な思考能力にも影響が現れるようになった。
さらに携帯電話が普及すると、簡便化した略語・造語類が数多く生み出され、短く簡単な言葉が会話の主体を占めるようになってきた。携帯電話は使いこなせても、パソコンは使えない人々も増えてきた。このような習慣が続くことで、日本語力の低下現象は無視できなくなり、客相手のビジネス現場で支障を与えるばかりか、ごく日常のコミュニケーション自体も揺るがすようになった。長い文章で丁寧な会話を交わすことがほとんど見られなくなり、その結果、相手に自分の意思を正確に伝えることが困難となり、コミュニケーションに様々な誤解が生じるようになった。
また、文章を書く際に必要な、基本的なマナーや暗黙の約束事など、まったく自覚できていない段階で情報発信を行ってしまう風潮が現れたことからも、相手に誤解や迷惑をを与えるという弊害が発生している。
他にも様々な背景がありながらも、日本語力の低下に伴う誤解は、相手に自分の意思を伝えることのできないストレスから、「切れる」という感情の爆発を生んだり、時には凶悪な犯罪行為すら起こす一因となっているものと思われる。 実は、インターネット向けの本稿ではそのような一般的な話をしたい訳ではない。思いもよらぬところに悪影響が出ていることを伝えたいからである。

第三者の立場に立つジャーナリストの仕事
一般的に、テレビや新聞など報道機関は、何か大きな事件や珍しい出来事が発生すれば、まずは当事者や目撃者に取材して、どのような出来事がどのような背景で生じたのかを探り、証言の信憑性を検証するとともに、必要とあれば、参考となる過去の情報を調べ対比させるなどして、視聴者に簡単に理解できるように要約して報道しようとする。これはごく当たり前のことであり、ジャーナリストである筆者の仕事も同様である。
例えば、オウム真理教のようなカルト教団への取材も、できるだけ早い時期に、是非を断定することなく、第三者の立場で事実関係を客観的に示しておくことは大切な仕事となる。当然のことながら、犯罪行為が疑われたとしても、未確認段階で黒と断定した報道は行き過ぎである。もし、すべてが合法的な行為で、一部の人々が単に感情的に容認したくないレベルのことであれば、そのような人々の行動をペンによる暴力で糾弾することはさらに悪質である。そのため、ジャーナリストは、事実関係を客観的に提示することに集中し、その後の判断は司法当局や読者に委ねる姿勢が求められる。
このような基本的な姿勢から、筆者はアメリカ・ヨーロッパで目立ち始めたNESARA公布要求運動という怪現象を2002年から2003年夏の間に取材し、拙著『世界を変えるNESARAの謎』(2004年、明窓出版刊)の中で報告した。

二つのNESARA
まずは、NESARA公布要求運動という怪行動を起こす人々に、そもそもNESARAとは何を意味するもので、なぜそのような行動を行うのか取材し、彼らの主張を要約して報告したのが拙著の第一章である。筆者がNESARAの存在に関心を持ち始めた2002年当時、Dove of Onenessと名乗る存在(シャイニ・グッドウィン氏)が中心となって、政府機関からリークされた情報としてこのNESARA情報を発信していた。彼女によると、このNESARAは秘密裏に議会で可決されたにもかかわらず、極秘にされ、その施行が見送られてきた。そこで、その状況に抗議すべく、NESARA公布要求運動を行ってきたという。彼女の言うNESARAとは、National Economic Security And Reformation Actの略である。
肝心のNESARAの中身であるが、それは拙著で確認頂くとして、常識的には考えがたいことが含まれていた(ここで断っておくが、当然のことながら、あくまで彼女らの主張を要約・説明したのが第一章であり、筆者の主張ではない)。
次に、筆者は、そもそもNESARA公布要求運動という怪現象が発生する前から、類似点はあるものの、まったく異なるNESARA (National Economic Stabilization and Recovery Act) が既に存在していたことを第二章で紹介した。このNESARAはハーベイ・バーナード博士が40年ほど前から暖めてきた経済・税制理論を1996年に体系化し、その後NESARAインスティテュートを設立し、議会に提出可能な法案(草稿)として政治家達にその提出を働きかけてきたものである。 このNESARA法案には、これまで盲点とされてきたローン計算式自体の修正をはじめ、金本位制の復活、存在自体が違憲である所得税を廃止し、生活必需品(住宅を含む)への非課税枠を設けた国家消費税の採用、同じく存在自体が違憲であるFRBの解体等が含まれた。米財務省も2002年にこのNESARA法案に対して異例の見解を発表しているが、もし議会に提出されることがあれば、その内容は、経済学者や税制の専門家達により、シミュレーションを含めた検証がさらに求められるだろう。

さらなる混乱
拙著を最後までお読み頂いた読者は誤解なくNESARAの真相を理解しているものと思うが、リーク情報とされるNESARA情報の発信者達は、好んでオカルト的な精神論も話題とした。そして、チャネリングという未知の存在からの情報受信においても、NESARAという具体名が言及されるようになると、NESARAに関する情報は瞬く間に世界中に広がった。
実のところ、リーク情報とされたNESARAの中身としてグッドウィン氏が示した情報は、バーナード博士のNESARA(National Economic Stabilization and Recovery Act)法案を盗用したものであった。そして、名称が異なる点に対しては、緘口令が敷かれたために、正式な名称(National Economic Security And Reformation Act)を表立って使えない事情があったものと説明された。しかし、これではリーク情報の中身と一致しないと矛盾を感じたのか、無断転載を省みたのか不明であるが、グッドウィン氏は、のちにNESARA法案の内容が分からないように、盗用法案をネット上から削除した。
リーク情報やチャネリング情報として広まったNESARA情報には、まったく具体性が存在しない。そのため、もし彼女らが信じるところのNESARAが存在して、採用を検討しようにも、検証することができない。
そのため、グッドウィン氏が主張したNESARA(以後、偽NESARA)の支持者達は、俗に言うところのカルト教団的なイメージが強い。一番困ったのは、NESARA発案者のバーナード博士である。自身の理論をNESARAと名付けて、1997年に『Draining the Swamp』として出版しておきながらも、二番煎じの異なるNESARAが世界中に広まってしまったからである。

ネット利用による思考力麻痺?
バーナード博士が味わった苦痛と比べたら遥かに軽いものであるが、筆者も同様な経験をした。つまり、一ジャーナリストである筆者が、NESARAという怪情報の真相を追究すべく、取材を行い、本として発表したにもかかわらず、まったく異なった偽NESARA情報が日本国内に広がったのである。
本来当たり前のことなのだが、報道するジャーナリストの立場は事件の当事者とは無関係であることが、どうやら常識として通用しなくなってきている。最初にNESARA情報を報じた筆者が、あたかもグッドウィン氏が主張する偽NESARAの普及活動でも行っているかのように誤解する人々が存在するようなのだ。これこそ、まさに怪現象であり、バーナード博士同様に筆者も理解に苦しんだものである。
このような怪現象は、ネット利用者の思考力低下が背景に存在するように思われる。欧米の状況と比較して、なぜか日本人の著者達は情報源を明確にしない傾向があり、それを許してしまう体質が存在した。その状況に慣れてしまった人々には、文章を書く上での基本的なルールすら忘れられてしまったのかもしれない。第三者から聞いた情報を、まるで自分の取材活動で得た情報として出版物やネットを通して情報発信する人々も多く見られるようになった。
読者が存在し、ビジネスが成り立つ以上、売れるものは現代人の価値観に合う(需要がある)ものと考え、容認する姿勢は必ずしも否定しない。しかし、例えば、学者が自分の専門分野で行う執筆内容と、趣味として書くエッセイのようなものとでは、受け止める側にも異なった意識が必要である。また、執筆内容が印刷・出版されて、不特定多数の人々の目に触れるようになることには、様々な責任が伴う。この点を尊重するからこそ、文章を書く上で、暗黙のルールが存在している。世間が受け入れる(売れる)から、認められているということは言えない。

個人も法人も区別なし
現在、個人のホームページ、ブログ、掲示板での投稿などが、商用サイト並みに影響力を持つようになってきた。書いた本人は一個人による日記のつもりでも、気が付いてみると、多くの人々がその人のサイトを参考にしていて、大きな影響力を持っていたということがある。例えば、「きっこの日記」というのも、その典型例と言えようが、良くも悪くも、素人個人の独り言だから問題ないとは言えなくなってきた。どこかでの自分の発言により、どこかの企業の株がストップ安になったり、思わぬ影響を与えることがある。
かつては、文章を書くという行為は責任を伴う、重い仕事であった。作者には十分な日本語能力だけでなく、情報を提供する上での最低限のルールやマナーというものが暗黙のうちに存在しており、新聞社や出版社も事前に十分なチェックを行った。 ところが、現在の状況はまったく異なる。文章を書くことをまったく学んできていない素人が情報発信を行うようになったのだ。そこには、情報発信に伴うルールやマナーといったものが存在しない。他人の情報を紹介するに当たり、かつては常識とされたマナーを知らないがために、部分的な引用により誤った情報を流布したり、情報源の明記を怠ることで、誰が発信した情報なのか確認不能な情報が大量に増殖していく状況が生まれたのだ。
基本的な日本語力や文章を書く上でのマナーを学ばずして情報発信してはならないとまでは言わない。昔から、自費出版という手段も存在したからである。しかし、自費出版というのは、自ら大きな出費を覚悟して行ったものであり、それでも自費出版を行った人々は、最低限、文章を書く上での暗黙の約束事を理解していた。現在のように、未確認の情報が無自覚に噂話のような形で増殖していく状況は存在しなかったのだ。
しかし、現実を考えると、無自覚に情報発信を行うサイトの集積が、今の社会を反映している。そう考えると、書籍のような印刷物での発言も、ネット上での個人の発言も、影響力においては、大差はなくなってきている。しかし、今一度思い出して頂きたいのが、やはり、どのような立場の人が書いたものであるのか?ということである。
職業専門家として無視できない人の発言と、個人サイトにおける日常的な発言とは異なる。少々知的な芸能人や占い師の発言も、専門家の発言とは異なる。
主語なしで会話が成り立つ日本語ゆえの問題もあろうが、近年、主語に対する注意力が散漫となってきている。ジャーナリストとしての筆者が書いた文章においても、主語を正確に認識することができなくなり、発生した事件の当事者と報道者を混同する事態が起きているのだ。

拙著出版後の変化
現在、日本国内では大半の人がNESARAの真相を理解していない。グッドウィン氏の主張する偽NESARAは確認不可能な情報である。彼女は寄付金を募る行為を行ってきていたため、それで生活する詐欺師と断定するメディア報道も存在した。
もちろん、グッドウィン氏の主張する偽NESARAの「内容」全体を否定しようとするものではない。リーク情報とされる情報源に匿名性が必要とされるケースは、ジャーナリズムには付き物だ。一部事実に反する主張もあるが、すべてを否定できるものではない。また、ジャーナリストが必要以上の憶測を述べるべきではない。そのため、筆者も拙著においては客観的な事実関係を述べるだけに留めてきた。
だが、拙著が出版されて以降、状況はさらに変化し、寄付金だけでなく、内密に貴金属投資を勧誘する状況も現れた。アメリカでは未確認情報を流布しながら寄付金を募る程度のことでは違法行為とはならない。そのため、現地の状況を知らない日本人に対して、今一度、NESARAに関して、いや、情報に接することの意味を喚起しておく必要性を感じた。
拙著の存在がありながらも、残念ながら何の歯止めにもならず、日本国内では、あくまでもNESARAの一面に過ぎない、客観的検証を欠いた偽NESARA情報を受け売りする人々が現れている。拙著で言えば、第一章で掲載された部分だけが限定的に取り上げられ、広まっているのだ。これでは真実の1%も見えてこない。アメリカ国内では、危険性が認識され、下火になりつつあったにもかかわらず、日本では逆に怪情報が氾濫する不可解な状況が生まれたのだ。

ついに詐欺被害者が現れた
2006年6月18日付けの米『News Tribune』紙によると、シャイニ・グッドウィン氏が偽NESARA情報を流布し、サン・フランシスコ在住の老人から1万ドルを騙し取ったとして、州法務省の消費者保護課に訴えが届いている。被害者の娘によると、実際の被害総額は数十万ドルに及ぶという。
筆者が、2003年の取材時にシャイニ・グッドウィン氏(の語る偽NESARA)を疑問視して、批判的・客観的に事実関係を報じたのは拙著『世界を変えるNESARAの謎』が出版された2004年のことであった。その時点では、ペンによる暴力ともなるため、ジャーナリストである筆者がシャイニ・グッドウィン氏を詐欺師として断定した表現は避け、疑問を表しながら批判的に捉える程度で留めた背景がある。
ところが、2006年6月以降、日本では未だにシャイニ・グッドウィン氏が主導する偽NESARAの危険性を指摘するどころか、支持表明する人々が存在する。彼女の詐欺行為に関与し、その恩恵を受けているのかどうかは不明であるが、極めて危険な状況が存在している。
実のところ、このような事実関係は、ウィキペディア英語版でも記載されていることである。情報発信者がごく基本的な情報収集を怠っており、文章を書くために必要とされる最低限のルールやマナーを知らないことはまことに残念なことである。また、ネットで検索を行えば、誰でも簡単に真相に到達できる現状を考えると、日本人の日本語能力の低下現象は、読解力だけでなく、思考能力の低下にも及んでいることを窺わせる。

偽NESARA情報がNESARAを潰した
ここで、現在までの流れを今一度整理しておくことにする。
1996年、最初にNESARA法案をまとめたバーナード博士は、NESARAインスティテュートを設立し、政治家達にNESARAがいかに今の社会を有効に改革させうるか、ロビー活動を通じて訴えてきた。 実際、NESARAインスティテュートの努力もあり、有力な政治家達にNESARAの名前は知られるようになっていった。
ところが、そのような矢先(2002年頃)、不可思議な現象が発生した。偽NESARA情報がインターネット上で急速に広がり始めたのだ。
そもそも、政治家や政治・経済学者などの専門家のみが知っていたはずのNESARAが、なぜか一般庶民、しかも、オカルト的な精神論を語る人々の格好の話題となったのだ。
2002年、NESARAに関する問い合わせが殺到したことを受けて、米財務省はNESARA法案は議会に提出されておらず、可決されてもいない事実を説明した。
もちろん、当初NESARAとはバーナード博士が考案したものであると財務省は認識していた。ところが、問い合わせをしてきた人々の大半が偽NESARA論者であったことに気付いたのが理由と思われるが(誤解を避ける目的もあったのだろうが)、しばらくして財務省はNESARAに関する回答をホームページ上から削除した。
そして、皮肉なことに、NESARAを懐疑的に捉える政治家・経済学者達が一気に増えてしまったのだ。そこで、まぎわらしいと同時に、如何わしいNESARAは敬遠されることになった。
そのため、代案的に浮上してきたのが、内容的にはNESARA以下とも言えたFairTax法案やGriffin案(のちに『参考』で詳述)であった。つまり、完成度の高かったNESARAがようやく本格的に米政界で取り上げられようとしていた状況を潰してしまった張本人は、実は偽NESARA情報であったのだ。
この事実は極めて重要である。似て非なるものを流布することで、優れていたはずのものが潰され、それ以下の代替案に取って代わるという方向性が生まれてしまったからだ。
情報の取り扱いと発信は極めて重いテーマである。そして、情報を受け止める側にも覚悟が必要だ。

求められる主体的判断能力
確認して頂きたい。不可解な情報があれば、何を情報源としているのか? そして、他人に頼る(意見を求める)前に、自分で主体的に考えて頂きたい。ジャーナリストは読者の保護者ではない。確認できない情報を、どのように消化するか、それは自分次第である。それは未知なることに可能性を閉じることではなく、その逆のためにも、主体的に思考して頂きたい。
NESARAは、我々が過去に行ってきた過ちや忘れてきた問題点を思い出させ、将来へ向けた可能性を示す切っ掛けを与えてくれている。ところが、そのような明るい可能性を、一般人が間接的に偽情報を流布して、自ら潰してしまったと同時に、格下げされた代替案で満足するよう促しているのが現状のように思われるのだ。
皮肉なことに、ハーベイ・バーナード博士は2005年に他界した。生前、自己のNESARA法案が詐欺的な行為に利用されていたことは認識していたが、実際に被害者が出ていたことはあの世で知ることになった(幸い、バーナード博士亡き後もNESARAインスティテュートは存続している)。
今の社会が生まれた責任は、情報を発した側だけにあるのではなく、受け止める側にも存在する。不正を行う政治家を選んだ責任は我々にある。未確認情報を受け売りして広める人々を野放しにするのも、我々に責任がある。なぜなら、そのような人々の主張に注目し、書籍を購入したり、お金を払って講演を聞きに行ったり、間接的に彼らをサポートしているのは消費者の側にあるからだ。
現行の法の下では、文章を書く上でのマナーや約束事を人に強いることは不可能であると同時に、読者がインターネットを通じて情報発信することにも規制はできない。
現在、日本人の思考力低下は危険なまでのレベルに到達している。本国で相手にされなくなった作家達が日本市場向けに特別に書き下ろした本が広く受け入れられるなど、都合良く利用される現状も存在するからだ。
この機会に是非目覚めて頂きたいものである。


■■■■■■■■■■■■■■ 参考 ■■■■■■■■■■■■■■
○下記はバーナード博士(NESARAインスティテュート)が偽NESARAの普及により被害を被った状況と、偽NESARAへの警告を報じたページ。諸メディアでのNESARA報道に関するリンクが含まれる。
http://nesara.org/articles/the_real_nesara.htm

NESARAの現状
アメリカで法が施行される(効力を発生させる)ためには、議会に法案が提出され、審議の上、承認される必要がある。 もちろん、NESARAは過去にも現時点でもまだ法案として議会にも提出されていない。この点は、2002年に米財務省が指摘した通りである。
議員を説得してNESARA法案を提出してもらうだけでも大仕事であるが、議会で可決させることはさらに険しい道程である。 仮に、現実的に法案が提出されるような動きが現れれば、当然のごとく、経済学者達により検証される。 そして、有用性に欠ければ、単純に承認されることは無い。
そもそもNESARA法案の中身は、消費税率や生活必需品(住宅も含む)に対する非課税品目など、流動的な部分は経済・税制の専門家達によって検証が行われるべきものである。 その流動的な部分こそが大きな意味を持つこともあるが、現時点においては、経済を専門としていない筆者のようなジャーナリストや、日本のような国外の一般人がその中身を議論する段階とは思えない。
尚、最新の状況は、下記で確認頂きたい。
http://nesara.org/main/status_of_the_bill.htm

筆者のNESARAに対する評価
筆者は偽NESARAもNESARAインスティテュートによるオリジナルのNESARAも、支持・不支持するものではない。 ただ、近年のNESARAに関する動きを見れば、これまで見逃してきた盲点を見直し、社会を変えようとする人々の意志を読み取ることができる。 そのような意味で、NESARAが憲法の精神を取り戻し、過去の不正を正す方向性を示した面はあるだろうが、悪用された面で、逆効果となった可能性も否定できない。 もし、今後、アメリカの政界で様々な不正が暴かれ、FRBが解体されたり、金本位制が復活したり、税の徴収方法が変更されたとしても、正式にNESARAが議会で可決されていない段階においては、 決してNESARAの功績として解釈できるものではない。ただ、これは言葉遊びであるが、徐々にアメリカ社会が憲法に則ったものに改善されて行けば、それはNESARAによるものだと主張する人々は現れるだろう。 しかし、憲法の精神から逸れてしまった部分が正される動きがあったとしても、本来、それは当然のことであり、NESARAによるものではない。 そのため、筆者は「NESARA的」という言葉を使うのだが、そのような「NESARA的」社会がやってくる可能性は否定しないし、むしろ必然的な動きと言えるだろう。 実際のところ、バーナード博士等のロビー活動がカンフル剤となり、改革の分野を限定したものだが、NESARAと近い法案は議会に提出されたものもあり、可決へ向けて審議・検討が続けられている。
今、アメリカ社会は確実に改革へ向けた準備を進めている。筆者は、いつくもの法案の集積として「NESARA的な」変化・社会が生まれてくることは必然的であり、それを期 待・想定すると同時に、その可能性は十分あると考える。

NESARA的な動き
NESARAとは異なるものの、NESARA的な改革の一部を達成すべく、様々な法案や法案草稿が作成されている (もちろん、NESARAを意識して作成・検証されてきた面もあり、NESARAインスティテュートの功績は大きいと言える)。 以下で数字でリストしたものと、アルファベットでリストしたものの両方が実現した場合(特に 1 と b )、NESARAが実現したものと誤解する人々も存在するだろう。

= 財政政策での改革 =
1) FairTax (H.R.25/S.1025)
FairTax法案は、ジョージア州選出の上院議員ジョン・リンダー氏(共和党)が1999年7月に議会に提出したもので、可決が待たれる法案の一つである。基本的に、所得税他の税金を23%の小売税(実質30%*の消費税に相当)に置き換える。非課税対象は、中古品、預貯金(投資・金融商品含む)、教育費、輸出品、仲介品など。 貧困層に対しては毎月リベートを支給することで対応。近年、FairTax法の採用を求める動きは高まっており、リンダー氏は2005年に『The FairTax Book』を出版し、FairTax法への支持を呼びかけている。FairTax法を支持する議員は70人程度まで増えている。
問題点は、貧困層から漏れた低所得者に、実質30%もの高率の消費税が重くのしかかることだ。購買力に関しては所得が低い者の方が高まると主張するものもおり、賛否が分かれるが、全般的にアメリカの経済成長を促進するものと考えられている。
*23%の小売税が実質30%となる理由は、旧式の計算法が採用されているためである。かつては、税込100ドルの商品のうち、23ドルが税金で、77ドルが商品本体価格の場合、税率を23%と考えたのである。今日、世界的に普及している計算方法では、30%の消費税に相当する。
2) Individual Tax Freedom Act of 2001 (H.R.2717)
Fair Taxと類似するもので、税収は15%の消費税に統一。NESARA以上に生活必需品にも課税される。
※FairTax法と異なり、低所得者へ対する非課税枠が広く、税率も半分以下(14%)の国家消費税で足りるNESARAの方が優れているとして、NESARAインスティテュートでは比較表を作成して、FairTax法に反対し、NESARA支持を呼びかけている。

= 貨幣政策での改革 =
a) The Monetary Reform Act (MRA)
通称MRA。FRBを解体し、貨幣の発行は政府(財務省)が行う。マネー・サプライの拡大は固定した年率で政府によって行われる。
b) G. Edward Griffin案
The Creature from Jekyll Island 』の著者エドワード・グリフィン氏による案で、NESARAと類似するが、FRBを解体し、貨幣の発行は政府(財務省)が行う。また、金本位制を採用する。ロン・ポール議員も支持するとされる。
NESARAとの比較
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